朝、折りたたみ傘の水を切ろうとした。
軽く振った。
そのまま傘が手から離れて、ホームの向こう、線路の真ん中に落ちた。
1. 駅員がいない
朝早かった。
駅員を探した。いない。
時間帯のせいか、朝のこの時間は人がいないらしい。
困った。傘は線路の真ん中で、ぽつんと落ちている。
2. 電車が接近してきた
そうしているうちに、電車が接近してきた。
緊急停止になるかもしれないと思った。
でも傘は線路の真ん中だ。車輪が通る位置からは外れている。
大丈夫だろうと思いながら、注視した。
電車は問題なく入ってきて、何事もなく到着した。
3. 頭に浮かんだのは8000万円のことだった
乗車してから、別の不安が出てきた。
風で傘がずれて、線路の方に乗ってしまったら。それで電車が止まったらどうしよう。
そのとき頭に浮かんだのは、申し訳ないとか、迷惑をかけて恥ずかしいとか、そういうことじゃなかった。
電車を止めたら、8000万取られるんじゃないか。
そう思った。
遅延の損害賠償とか、そういう知識があるわけじゃない。ただ反射的に、資産のことが頭をよぎった。
ケチだから。
4. 監視カメラでバレる前に
ホームには監視カメラがある。
たぶん撮られている。いずれバレる。
だったら先に言っておいた方がいいと思った。
電車に乗って、別の駅に着いたところで、駅員に連絡した。
事情を話すと、「撤去しますから安心してください」と言われた。
一安心した。
5. 帰りに見たら、まだあった
仕事を終えて、帰りに同じ場所を通った。
傘を見た。
まだあった。
撤去しますと言われていたのに、線路にそのまま落ちていた。
6. もう一度伝えたら、マジックハンドで普通に取れた
もう一度、駅員に伝えた。
今度はその場で対応してくれた。
マジックハンドのようなものを使って、あっさり取ってくれた。
「良かったですね、取れて」
と言われた。
それだけだった。
7. なんだかなぁ
朝からずっと、頭の中で電車を止めたらどうしようと考えていた。
8000万取られるかもしれないとまで思っていた。
でも実際は、マジックハンドで普通に取れる程度のことだった。
駅員にとっては、よくある日常の一コマだったんだと思う。
なんだかなぁ、という気持ちだけが残った。
まとめ
- 折りたたみ傘の水を切ろうとして、線路の真ん中に飛んで落ちた
- 駅員がいない時間帯で、電車が接近してきた
- 電車を止めたら8000万取られるんじゃないかと反射的に思った
- 結局問題なく到着し、別の駅で駅員に事情を伝えた
- 帰りに見たらまだ落ちていて、もう一度伝えたらマジックハンドで普通に回収された
- 「良かったですね、取れて」とだけ言われた
一日中気にしていたことが、向こうにとっては日常の一コマだった。たぶん、たいていのことはそうだ。
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