また「あと1年」だ。
前にも書いた。今回は、かかっている真っ最中に書く。
1. 足りていると分かった直後に、次の数字が出てきた
先日、資産と生活費を一から計算し直した。
住居費、食費、外食、旅行、65歳からの年金。全部入れて、出た答えは「もう足りている」。
ところが、その直後。
「あと数年働けば、完全に安心だよな」。
数日後には、ネットで「FIREには2億必要」という声。インフレが続いたらどうする。
最後に出てきたのは、「もっと貯める?」。
一つずつなら、どれももっともな心配だ。
でも並べてみると、足りたと分かるたびに、ゴールの線が先に動いているだけだった。
2. 気になるなら、データで確かめる
気になったまま働くのも癪なので、自分で確かめることにした。
使ったのは、ロバート・シラー教授が公開している1871年以降の米国株のデータ。配当も物価も入っている。
これで、有名な「トリニティスタディ」と同じ計算をやってみた。
前に書いた4%ルールの記事では、自分の配分がたまたま株75:債券25になっていた、という話をした。今回は、その配分で実際にどうなるかを数える。
計算の条件
- 資産は株75%、債券25%
- 初年度に、資産の一定割合を取り崩す
- 翌年からは、物価が上がった分だけ取り崩す額を増やす
- 1872年以降の各年からスタートし、2022年までのデータで最後まで追えるケースについて、資産が尽きなかった割合を数える
3. 結果
資産が尽きなかった割合(株75%・債券25%)
| 取り崩し率 | 30年 | 40年 | 50年 |
|---|---|---|---|
| 3.0% | 100% | 100% | 100% |
| 3.5% | 100% | 100% | 98% |
| 4.0% | 97% | 93% | 89% |
| 4.5% | 93% | 79% | 70% |
| 5.0% | 77% | 69% | 56% |
| 6.0% | 62% | 43% | 37% |
分かったことは、3つ。
1. 4%ルールは、30年ならほぼ正しい
原典の結論は、150年分のデータでもそのまま出た。
2. 期間が長いと、4%では足りない
40代で辞めるなら、40〜50年を見ておく必要がある。安心できるのは、3.5%くらいまで。
3. 4%の失敗は、ほぼ1960年代半ばスタートに集中していた
30年で尽きたのは、1965年・1966年・1969年スタート。40年に伸ばすと、1964年から1969年までと、1973年が加わる。
取り崩しを始めた直後に、高インフレと株安が10年ほど続いた時期だ。
平均のリターンが低かったんじゃない。悪い年が、最初に来た。それが原因だった。
50年まで伸ばすと、1906年・1907年・1937年スタートも落ちる。どれも、始めてすぐに大きな下げが来ている。
逆に言えば、ほとんどのケースで、資産は減るどころか増えていた。
4. 自分の数字に当てはめると
俺の生活費で計算すると、取り崩し率は3%台前半。
65歳から年金が入れば、さらに下がる。
この条件なら、150年分のどの年から始めても、資産は尽きていない。
2億もいらない。データは、とっくに答えを出していた。
5. 辞められないのは、数字の問題じゃない
計算は、何度やっても同じ答えを返してくる。
なのに、少しすると不安が戻ってきて、また条件を変えて計算したくなる。
欲しかったのは、数字じゃない。
たぶん、「まだ辞めなくていい理由」だった。
「まだ足りない」なら、決めなくて済む。「足りているのに決められない」は、理由にならない。だから、居心地が悪い。
それに、俺はケチだ。もらえる給料を手放すのが惜しい。この性分で資産を作ってきたから、なおさら。
でも、ケチが本当に惜しむべきなのは、時間の方だと思うようになった。
通勤は片道1時間半弱。往復で3時間近い。年に直すと、ざっと700時間。
お金は、あとからでも増やせる。時間は、増やせない。
6. 区切りを、金額から時期に変えたい
金額をゴールにすると、届くたびに線が動く。届けば次。そこに届けば、また次。終わらない。
だから、辞める区切りは、金額じゃなく、時期か出来事で決めた方がいいんだろうな、と思っている。
たとえば、職場の人事が一段落したタイミング。それが長引くようなら、自分で期限を切る。
まだ、そうしようと思っているだけだ。決めたわけじゃない。
その前にやることは、一つ。退職金の額を確かめる。それだけだ。
7. このデータの注意点
最後に、正直に書いておく。
- 米国のデータだ。 米国は過去150年で一番うまくいった市場なので、結果は甘めに出る。日本株なら、1989年の最高値で始めたケースはかなり悪い
- 手数料・税金・為替は入れていない。 実際は、その分だけ厳しくなる
- 2023年以降は入っていない。 配当と物価のデータが揃っていたのが、2022年までだった
それでも、「足りているかどうか」を判断する材料としては、十分だと思う。
まとめ
- 「足りている」と分かるたびに、ゴールの線が先に動いていた
- 1871年からの米国株データで、4%ルールを自分で検証した
- 30年なら4%でほぼ成功。40〜50年なら3.5%までが安心圏
- 4%での失敗は、ほぼ1960年代半ばスタート。悪い年が最初に来たのが原因
- 俺の取り崩し率は3%台前半。どの年から始めても尽きていない
- 辞められないのは数字の問題じゃない。区切りを金額から時期に変えたい
同じように「あと1年」を繰り返している人がいたら、一度、自分の数字で確かめてみてほしい。答えは、もう出ていることが多い。
俺も、出ていた。辞めていないだけで。
たぶん、また悩む。そのときは、この表を見に来ればいい。
※投資にはリスクが伴います。将来の運用成果を保証するものではありません。投資は自己責任でお願いします。
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