隣の科で事件が起きた。

隣の科の係長、40代、子供3人。

部下の女の子を妊娠させた。離婚して、その部下と結婚するらしい。部下は辞めずに産休を取るという。

すごい話だ、と思った。でもすぐに「他人事じゃないな」という気持ちになった。


他人事じゃない

正直、笑えない。

俺もバツイチ女子に「内緒ね」と言われている。退職日に後ろから抱きつかれたこともある。「あなたと結婚してたら幸せだったのに」とも言われた。泣かれたこともある。

一歩間違えれば、隣の係長と同じだったかもしれない。

鈍感だったから気づかなかった部分もある。気づいていたら、どうしていたか。正直わからない。だから「鈍感でよかった」と本気で思う。


係長が失ったもの

係長は何を失ったか。

家族。子供3人との日常。積み上げてきた家庭。毎朝子供の顔を見る生活。

それだけじゃない。職場での信頼。周りの目。部下との関係性。キャリアへの影響。評判。

全部リセットされた。

係長が積み上げてきたものが何かはわからない。でも40代で子供3人を育てながら働いてきた年月は確かにあった。それが一つの判断で崩れた。


俺が何もできない理由

バツイチ女子はかわいい。内緒ねと言ってくる。旦那ポジションになってる。

でも何もできない。

妻がいる。資産がある。7500万積み上げてきた。一億まであと少しだ。

全部リセットしてまでやることじゃない。


係長を見て確信した

係長の話を聞いて、確信した。

俺が何もできないのは、弱いからじゃない。

失いたくないものが多すぎるからだ。

それだけ積み上げてきたということだ。資産が増えるにつれて、失いたくないものが増えていった。守るものが多い人間は、リスクを取らなくなる。それは臆病じゃなくて、賢さだと思いたい。


鈍感でいい、何もできなくていい

鈍感で助かった。何もできなくていい。

バツイチ女子が今日も笑顔で手を振ってくれた。それだけでいい。

サインを受け取らなかったおかげで、全部が守られている。妻も、資産も、家族も、積み上げてきた時間も。


隣の係長よ

隣の係長が今どういう状況にあるか、詳しくは知らない。

幸せかもしれない。後悔しているかもしれない。どちらかは他人にはわからない。

ただ俺は、同じ道は行かない。

失いたくないものがある。だから何もしない。それが答えだ。

隣の係長よ、大変だったな。でも俺は違う道を行く。