職場で「かわいいね」と言うようになってから、予想外のことが起きた。

言った本人には届く。でもそれだけじゃなかった。


褒め言葉は本人以外にも届く

気づいたのは、少し経ってからだ。

「あの人が〇〇さんのこと褒めてたよ」という話が、職場の中で伝わっていた。

別の人が伝えることがある。伝言ゲームで広まることがある。「あの人はよく褒めてくれる」という評判が、自分の知らないところで積み上がっていく。

褒め言葉は、思った以上に遠くまで届く。


退職日に「一度だけお願いがある」と言われた

ある日、退職する子に言われた。

「一度だけお願いがあるんですけど」

なんだろうと思った。仕事の引き継ぎか、手続きの話か。

「後ろからでいいので、抱きついていいですか?」

了承した。後ろから抱きつかれた。


正直、驚いた

予想していなかった。

日頃それほど話していた子じゃなかった。仕事で絡むことはあるが、特別に親しくしていたわけじゃない。

でも「かわいい」と言ったのが別の人経由で伝わっていたのかもしれない。職場の伝言ゲームは侮れない。俺が直接言った覚えはなかったのに、なんとなく伝わっていたのかもしれない。

40代でこういうことが起きるとは、本当に思っていなかった。


褒め言葉は投資に似ている

褒め言葉は、すぐに返ってくるわけじゃない。

でもどこかで、誰かに届いている。積み重なって、予想外のタイミングで返ってくる。

投資の複利みたいなものだと思う。今日の1000円が20年後の何万円かになるように、今日の「かわいいね」が、いつかの予想外の場面で返ってくる。

利回りは読めない。でも確実に積み上がっている。


褒めることにリスクはない

ハラスメントには気をつける必要がある。それは大前提だ。

外見を執拗に触れるとか、特定の人だけを褒めて別の意図があると思わせるとか、そういうのはダメだ。

でも「かわいいね」「優しいね」「そのセンスいいね」と自然に言える余裕があれば、職場の雰囲気は変わる。そしてたまに、予想外の形で返ってくる。


退職日の抱きつきは、人生で一番予想外の出来事だったかもしれない

それまでの人生で、退職日に抱きつかれたことはなかった。これからもそうないだろう。

でもあの一瞬は、「余裕を持って人と接してきた結果が、こういう形で返ってくることがあるんだな」と思わせてくれた。

お金の余裕が褒め言葉を生み、褒め言葉が評判を作り、評判が予想外の出来事を呼んだ。

すべてはつながっていた。

褒めることをやめる理由は、何もない。