社内に、アイデアを出す表彰制度みたいなものがある。
そこに、部門トップが自らネタを出してきた。
これを見た瞬間、思った。
下の人間は、もう提案しなくなるやつだ。
1. トップの案は、勝手に一番強く見える
理由は単純だ。
トップが出した案は、忖度がなくても、一番通りやすい案に見えてしまう。
部下からすれば、わざわざ張り合う理由がない。評価が上がる見込みは薄いのに、下手をすれば覚えが悪くなるリスクだけがある。
そうなると、どうせ上が決めるんでしょ、という空気になる。
誰も、手を挙げなくなる。
2. トップがプレイヤーになると、他は観客になる
これは、能力とか意欲の問題じゃない。
構造の問題だ。
トップが自分でアイデアを出す。つまりプレイヤーとして振る舞った瞬間、周りは自動的に観客の立場に押し込まれる。
本来トップがやるべきことは、自分で答えを出すことじゃない。
誰かの小さな提案を拾って、後押しすることだと思う。失敗しても評価が下がらない空気を作って、自分は最後まで手を挙げない。
それができて初めて、下から提案が出てくる土壌ができる。
トップが自分で手本を見せるのが有効なのは、まだ誰も動いていない、一番最初の段階だけだ。
組織が動き出したあとは、むしろ引くことが仕事になる。
3. 指摘しても、行動は変わらなかった
この制度、そもそも現場の主体性を引き出すために作られているものだ。
建前上も、トップが自分でネタを出す場じゃない。
その場でも、本来は下からの提案を後押しするための制度ですよね、という趣旨のことは言った。
それでも、提案は止まらなかった。
これは、単純に気づいていないという話じゃないと思う。
理屈では分かっていても、行動を変えられない。指摘されて、なるほどとはなっても、自分の番が来ると、つい手が出てしまう。
良いことをしている、という自己認識の方が、場を空けて待つという目に見えない価値より強いんだと思う。勘違いかもしれないが、そう見えた。
4. 数字が大きいことと、困っていることは別だ
今回のトップの提案には、もう一段厄介な構造があった。
きっかけは、ある業務の「やり直し件数」を集計したら、特定の作業が突出して多かった、という話だった。
ここで見落とされがちなのが、数字が大きいことと、実際に困っている人がいることは、別問題だということだ。
依頼元から不満やクレームが出ているわけじゃない。現場のメンバーも、これが一番の悩みだと感じているわけじゃない。そもそも、そのやり直しにかかる時間はごくわずかで、業務全体への影響もほぼない。
ただ、集計してみたら一番多かった。それだけだ。
数字として可視化されたものは、説明しやすいし、資料としても見栄えがする。だから、トップにとってはわかりやすい提案テーマに映る。
でも、件数が多いことと、実際のコストが大きいことは別問題だ。
件数だけを見て「多い=問題」と決めつけると、実質的な負担がほとんどないテーマに労力を割くことになる。しかも、本当に困っているけれど数値化しにくい課題の方が、後回しにされる。
測定されているものと、実際に困っているものは、別物だ。
5. 一歩引いて見られるのは、賭けていないからだと思う
こういう場面に、またかと思う。
でも同時に、いずれ自分が管理職になったときの反面教師として使えると、一歩引いて観察できる。
会社にすべてを賭けていないからこそ、感情的に消耗せず、こういう組織のクセを言語化できるんだと思う。
昔の自分なら、もっと苛立っていた気がする。
まとめ
- 部門トップが表彰制度に自らアイデアを出してきた
- トップの案は勝手に一番強く見え、下は誰も提案しなくなる
- トップがプレイヤーになると、他は観客になる。本来は場を作るのが仕事
- 指摘しても、理屈と行動は別だった
- やり直し件数が多いことと、実際に困っていることは別問題だった
- 測定されているものと、困っているものは別物
- 一歩引いて見られるのは、会社に全部を賭けていないからだと思う
自分がその立場になったら、答えを出す人じゃなく、答えを引き出す人でいたい。そんなことを、今週の職場の一コマから思った。
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