みんなが避けたノート部長には、もう一つの顔があった。
投資家だった。
本をよく読む人だった
ノート部長は、本をよく読む人だった。
ビジネス書、自己啓発書、投資の本。いろんなジャンルを読んでいた。そしてそれを部下に勧めてくれた。俺にもいくつか勧めてくれた。
正直、当時はあまり真剣に読んでいなかった。「部長が言うから一応読む」くらいの気持ちだった。
でも投資の話は、なんとなく耳に残っていた。
「投資するならまず100万円」
ノート部長がよく言っていた言葉がある。
「投資するならまず100万円貯めてからやれ」
当時の俺はその意味をあまり深く考えていなかった。
「100万円ないと始められないのか」くらいの浅い理解だった。投資の最低金額みたいな感覚で聞いていた。そういうルールがあるんだろうな、くらいに。
ちゃんと聞いておけばよかった。
少額だとつまらない、だからレバレッジをかける
FXで15万円溶かした後で、ようやく意味がわかった。
10万円で投資して、うまくいっても儲けは1万円程度だ。つまらない。
「もっと大きく動かせないか」と思う。そこでレバレッジという魔法の仕組みを知る。10万円で100万円分動かせる。うまくいけば10万円が儲かる。
でも外れたときの損失も同じだけ大きい。結果、少額でレバレッジをかけて負ける。
これがFXで失敗する典型的なパターンだ。俺もそうだった。少額だからこそ焦って大きく張って、大きく負けた。
100万円あれば、冷静になれる
ノート部長が言いたかったのはこういうことだったんだと思う。
100万円あれば、レバレッジをかけなくてもそれなりの金額が動く。インデックス投資なら、年5%でも5万円の利益になる。地味だが、実感できる数字だ。
余裕資金で戦えば、冷静に判断できる。含み損が出ても「まあ待てばいい」と思える。焦って動かす必要がない。
少額で焦ってレバレッジをかけるから負ける。まず100万円貯めてから始めれば、そのリスクを最初から避けられる。
シンプルだが、本当のことだった。
先に聞いておけばよかった
俺がFXで15万溶かしたのは、この教えを軽く聞き流していたからだ。
先にちゃんと聞いておけば、違う結果になっていたかもしれない。もっと早く100万円を貯めて、地道にインデックス投資を始めていたかもしれない。
ノート部長を避けていた時期があった。みんなと同じように、距離を置いていた。あの頃に向き合っていれば、もっと多くを学べたかもしれない。
みんなが避ける人ほど、ちゃんと向き合った方がいい。それはノート部長が俺に教えてくれたことだ。
ノート部長、ありがとう
直接言えたことは一度もない。
出世の話でも、投資の話でも、本当に感謝しているのに言えない。「ありがとうございます」という言葉はいつも表面的だった。
でも俺の今の資産の一部は、ノート部長の言葉で作られている。
「投資するならまず100万円」
この一言が、遠回りしながらも俺の投資の土台になった。
ノート部長、ありがとう。本人には言えないけど。