5000万円という数字を見た日のことは、今でも覚えている。

感動も興奮もなかった。ただ冷静に、一つのことを思った。

「家、一括で買えるな」

人間、達成感より先にそういうことを考えてしまう。


4%ルールで計算したら、現実を知った

投資を続けていると、4%ルールという考え方を知る。

資産の4%を毎年取り崩せば、資産が減らずに生活できるという目安だ。米国の研究で示されたFIREの基本的な計算式でもある。

5000万円の4%は200万円。月に換算すると約16万円。

「仕事、辞められないな」

家を買う前に、そっちが先に頭に浮かんだ。16万円じゃ今の生活水準には足りない。まだFIREは遠い。家を買ったらその資産が消えて、計算はさらに狂う。

なんとなく「5000万あれば十分だろう」と思っていた感覚が、数字を当てはめたとたん吹き飛んだ。


勉強するうちに、家を買わない理由が増えた

投資を始めると、自然と勉強する習慣がつく。投資系の動画を見るようになる。知識がついてくる。

すると気づいた。

会社に家賃補助がある。今すぐ買う必要はない。新築より中古の方が割安らしい。両学長も賃貸派だ。住む地域や家族構成が変われば、持ち家は逆に足かせになる。

「あれ、今買わなくていいんじゃないか?」

気づいたら、家を買う理由より買わない理由の方が増えていた。

周囲は違う。同僚も、友人も、40代になれば家を買う。「いつ買うの?」と聞かれることもある。でも俺には「なんで買うの?」という感覚の方が強くなっていた。


買っていたら、今の資産はなかった

これは本当の話だ。

仮に5000万円で家を一括購入していたら、その資産が生み出す配当も、複利の積み上がりも、全部リセットされる。家の価値は少しずつ下がる。資産を増やすどころか、逆向きに働く。

今振り返ると、あの時買わなかったことが資産形成の大きな分岐点だったと思う。

投資の勉強をしていなければ、勢いで買っていたかもしれない。「せっかく貯まったから、夢のマイホームを」という流れは自然だ。多くの人がそうする。

でも俺は買わなかった。知識が、衝動を止めてくれた。


知識が、一番大きな買い物を防いだ

投資の勉強は、お金を増やすだけじゃない。

無駄な大きな買い物を防ぐ効果もある。むしろそっちの効果の方が、長期的に見れば大きいかもしれない。

収入を増やすことより、無駄な支出を減らすことの方が、実は確実に資産を守る。住宅ローンという名の30年縛りを避けられたのは、勉強したからだ。

5000万円の達成感より、「家を買わない」という判断の方が、今となっては大きな決断だったと思う。


一億円貯まったら、その時また考える

家を買わない、と決めたわけじゃない。

ただ、今じゃない。それだけだ。

一億円貯まったら、その時また考える。その頃には状況も変わっているだろう。子供が独立しているかもしれない。好きな場所に小さな家を買えるかもしれない。

焦らなくていい。今の家賃補助があるうちは、賃貸で問題ない。

知識があれば、焦らなくなる。それも投資を勉強してよかったことの一つだ。